その笑顔を見てウタクは呆れたようにため息をついた。


「本当にしつこい奴だな……」


眉をしかめながらも落ち着いているウタクとは反対に皐月さんは顔色を変えた。


「た……狸!狸が来たぞ!」


皐月さんが叫びながら慌ただしく廊下を駆け出す。


「待て、皐月」


駆け出した皐月さんの背中にウタクが素早く声を掛け、皐月さんは驚いたように足を止めた。


「ウタク様!?」

「警報なら鳴らさなくていい」

「しかし狸が攻めてきたとなれば……」

「いや、今回は目的が違うだろ?なぁ狸」


土埃を払っているナライにウタクは面倒そうに尋ねた。

ナライは「あぁ、わかってんじゃん!」と挑発的な笑みを浮かべて、頭についた土もガシガシと豪快に払った。