「風なんて吹かなくていいってば!」
指定された庭は秋から冬へと移り変わるところだった。
木枯らしに向かって叫ぶが、私の声は何の力も発揮しない。
風は皐月さんが差し向けた刺客なのか。
落ち葉はヒラヒラと私を嘲笑うかのように華麗に舞い、あげくには馬鹿にしたかのように池に落ちていく。
池に落ちた葉は無視しようとしたけど、後から絶対皐月さんに注意されると思い、すくいあげることにした。
近くにいた家来の人に網を貸してほしいと言ったら快く貸してくれた。
その勢いで手伝いもお願いしてみたけど「皐月様に止められている」と断られた。
皐月さんは家来の中でトップの人らしい。
「う~……もうちょい。わっ!また遠く行った!」
借りた網で数枚の葉と格闘する。
私がクイと網を動かすと葉はツルリと水面を滑って行く。
……諦めれば良かった、って思ったのは事が起こってから。

