「ちょ……ちょっといつ着くのよ……!」


トイレは離れているようで、長い廊下を歩き、いくつもの部屋の前を通り、池をまたいでいる渡り廊下を歩き……やっとたどり着いた。


先を歩いていた皐月さんが足を止め、黄金色の髪をサラリと揺らし、こちらを振り返った。


「ここです。我慢できましたか?」

「……デリカシーのない質問!」


それでも一刻を争う私はすぐにトイレの中へ入った。

扉の向こうにまだ皐月さんの気配を感じる。


「あの、一人で戻れるから先にウタクのとこへ戻ってもらってていいんだけど」


だいたいそういう優しさは持ち合わせてるってわけ?

疑問に思いながらも、まだ去ることがない気配に耳を澄ませた。