「おい、厠(かわや)に案内してやれ」

「かしこまりました、ウタク様」


返事をした家来の声に顔が曇る。

御簾が上がって現れたのは、思った通り皐月さんだった。


「……ウタク、皐月さん以外の人は案内してくれないの?」

「俺に付いてきて欲しいか?」

「……やっぱりいいです」


そういう意味じゃないんだけど。

まぁ一度だけ場所を教えてもらって覚えれば一人で行けるようになるし。


「トイレの場所くらいちゃんと教えてくれますよね?」

「トイレ……厠のことですか?えぇ、もちろんです。別の場所で用を足されても困りますから」


皐月さんの小馬鹿にしたような笑いに歯を食いしばった。