あーん、なんてされるのは嫌だけど、

この際食べ物を分け与えてもらえるだけいいかな……なんて思っていたのに。


「ん」

「え、ちょ、ちょっと!本気じゃないよね!?」


ウタクは箸で取った卵焼きを自分の口へ持っていき、それを私に差し出してきた。

……要するに口移し。


ありえない。

箸で差し出されても恥じらうのに、口移しなんて恥じらうどころじゃない。

絶対拒否!


「無理!絶対ヤダ!それならいっそ食べずにいる!」

「……」


卵焼きを口で挟んでいるウタクは無言のまま私に近寄って、大きな手で頭を抱え込んできた。