「皐月、これが俺に似合いでないことは百も承知。地べたを這う毛虫でさえわかることだ」
ウタクが私を顎で指す。
……なんで一大決心してやってきた私がこんなにコケにされなきゃなんないの!
でも目の前の皐月さんに何か言われるより、ウタクに馬鹿にされる方がマシ。
私は唇を噛んで黙っていた。
「しかしもう一つ、地中に住む蟻でもわかることがあるだろう?」
「……」
皐月さんは答えない代わりに、拳を握っている。
蟻でもわかること、ちゃんとわかっているらしい。
「掟だ。俺はもう2年以上も掟を破っている」
「わ……わかっております!ウタク様が掟のために結婚されるのは!……ですが……!」
わかっているけど……それを認めたくないんでしょ?
嫁として連れてきたのが私みたいな小娘だから。

