陰陽(教)師

老人は首を振った。

「粘菌はあくまで研究対象のひとつ。ワシの専門はこの世の全てじゃよ」

「この世の全て?」

いきなり話がデカくなったなと、嵩史は思った。

「その通り。森羅万象あらゆるものがワシの研究対象じゃ。むろん好みはあるがの」

老人はここで一度、咳払いをした。

「最近の研究対象は妖怪じゃな」

「よ、妖怪?」

思わず声が裏返る。

「そんなにおかしな声を出さなくてもいいじゃろうが」

「あー、いや…そうなんだけど…」

嵩史は頭をかいた。

一癖ありそうと思って、声をかけてみたら、まさかの展開になってきた。

「妖怪の研究なんて、どうやるんだ?」

一応、人間の中にも、自分たちの存在を知る者はいる。

晴明や、担任の矢尾はそんな人間たちだ。

しかし自分たちを研究対象にしてる人間がいるとは、嵩史は思ってもみなかった。

「妖怪研究の基本は収集じゃよ」

老人は言った。