陰陽(教)師

老人はまた枯れ葉の下をあさった。

「おお、いたいた」

老人の言葉を受けて嵩史がそこを見ると、枯れ葉と土の間に、黄色い綿のようなものがびっしりとはりついていた。

「これが粘菌じゃよ」

老人が言った。

「アメーバ状の体を増殖させて、キノコのように胞子を作って繁殖してゆくという生物なんじゃ」

「カビとかキノコってことは植物なのか?」

見た目は黄色いカビにしか見えない。

菌類のようなものかと、嵩史は思った。

「繁殖の仕方は植物的じゃな。だがな、粘菌は移動するんじゃ」

老人いわく、粘菌は枯れ木や枯れ葉に住む微生物を求め、移動・摂食するという。

「そういった意味では粘菌は動物的な性質を持つ生物と言える」

「植物でもあり、動物でもあるってことか」

「面白いじゃろ、粘菌て生き物は」

老人は嵩史に相づちを求めるように笑った。

「ジイさん何者だい?」

嵩史は訊いてみた。

「ワシは学者じゃ」

「粘菌の?」