陰陽(教)師

枯れ葉を踏み締めながら近付くと、老人はちらりと嵩史を見た。

眼光は意外に鋭い。

嵩史はただ者ではない雰囲気を感じた。

しかし老人はすぐに視線を外すと、その場に屈み込んで、また枯れ葉をひっくり返しはじめた。

『なかなか癖のありそうなジイさんだ』

嵩史は心の中でほくそ笑んだ。

こういった手合いは、嫌いではない。

「何をしてるんスか?」

嵩史は腰を落として、老人に話しかけた。

老人はじろりと嵩史を見た。

またすぐに視線を外したが

「ネンキンを探しとるんじゃ」

という返事だけは返ってきた。

「年金?」

嵩史は首をかしげた。

確かに最近話題にはなっているが、なぜ今、この場所で?

もしや一癖どころか、二癖・三癖ある人物か?

嵩史が真意を計りかねていると

「お前さん、何か勘違いしとらんか?」

そう言って老人が顔をあげた。

「ワシが言ってるのは粘菌。ホコリカビのことじゃよ」

「カビ?」

「そうじゃ」