陰陽(教)師

嵩史はその提案にのったことを少しばかり後悔していた。

「同じ猫妖怪なんだけどな」

嵩史は猫又で明菜は五徳猫。

どうしてこうも違うのかと苦笑いしながらメールを開いた。

『今から探しに行くからね』

メールにはそうあった。

メールの着信時刻は12時15分。

明菜はこの場所を知っている。

妖怪の能力を使えば見つかるのは時間の問題だろう。

嵩史はこの場からさっさと離れることにした。

別に明菜が怖いわけではない。

わずらわしいことが嫌いなだけである。

それに腹も減っていた。

「星旺軒のラーメンか、小松屋のカレーパンにするか」

嵩史の頭の中はもう、今日の昼食のメニューに切り替わっていた。


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山を下ってゆくとシイやカシ、コナラやクヌギなどの木々に挟まれた一本道が出てくる。

このあたりまで来ると人の手が入った、いわゆる里山という地域になる。