陰陽(教)師

「話は変わるが、なぜパワーリフティングをやろうと思った?」

「両親が共にジムのインストラクターをやっているので、体を鍛えることを薦められたんです」

「パワーリフティングは薦められたのか、それともお前自身が選択したのか?」

「どうしてそう思ったんです?」

「この体だ。その気になればダンプカーだって持ち上げられるだろう」

晴明は大吾の分厚い胸板を軽く叩いた。

「見てたんですか、今朝のを」

「たまたま、な」

2人のやり取りを、鈴子は頭に?マークを浮かべながら聞いた。

「だがその怪力を使って世界記録を作っても、ただ目立つだけだ。人間社会で暮らす妖怪にとってそれは禁忌(タブー)に等しい」

こういう言い方は何だが、と前置きをして、晴明は言った。

「パワーリフティングは手を抜ける。『失敗』の芝居をすればいいわけだからな。それにパワーリフティングはオリンピック種目じゃない」