陰陽(教)師

「変わっているのは、人間も一緒だ」

晴明は口もとに笑みを浮かべながら言った。

「普通の職業につきたいやつもいれば、芸能人になりたいやつもいる。砂漠に緑を取り戻したいやつもいれば、世界中の山を登ることに一生をかけるやつもいる」

だがそれは、人それぞれの生き方。

「要には要の生き方があるってだけの話だろ」

要自身はやましい気持ちで人間社会に来たわけではない。

晴明にはそれだけで充分のようであった。

「…で、どうするつもりだ?」

「何をです?」

晴明の唐突な問い掛けに、大吾は細い目を少しだけ見開いた。

「ずっと今の両親のもとで、人間として過ごすつもりか」

「とりあえず両親が生きている間は」

「困難があるかもな」

「要石として長い年月を生きてきましたから。その年月に比べれば、人間の一生なんてあっという間です」

「それはそうだ」

晴明は納得したようにうなずいた。