陰陽(教)師

そこで大吾は

「自分が夫婦の子供になろう」

そう考えたという。

「幸いにして、要石の役目は終えていましたから、人間に化け、夫婦のもとを訪れるのに支障はありませんでした」

「え、その図体で訪ねたの?」

「いや、最初は子供の姿で行った」

「だよねー」

「話の腰を折るな」

晴明は再び、ファイルで鈴子の頭を小突いた。

「すみませーん」

鈴子は頬を膨らませた。

「続けてくれ」

そんな彼女を無視して、晴明は大吾に話の続きを促した。

「夫婦の前には、迷子のふりをして現れました」

「ほう」

「最初は戸惑っていましたが、自分が身元不明の子供とわかると、夫婦は迷わず自分を養子に迎え入れました」

「そして今に至るというワケか」

「そうです」

「要は、あたしたちの中じゃ一番変わってるかもねー」

鈴子は大吾を見上げながら言った。

「妖怪が人間の養子になるなんて、聞いたことないもん」