陰陽(教)師

大吾は2人が会話する間微動だにしなかった。

学生服だけで、上着を羽織っていないにも関わらず、寒風吹きすさぶこの屋上で平然としている。

圧倒的な肉体が、寒さを弾いているのかもしれない。

「正体は要石か」

晴明は言った。

「名は正体を表す、なんて言葉は存在しないが」

要石(かなめいし)とは、地中深くまで埋まって、地震を鎮めているとされる霊石のことである。

大昔、地震は地中に住む大ナマズが起こすとされていた。

要石はその大ナマズを押さえつけ、地震を起こさせないようにしていたと言われている。

その名を知られているのは茨城県鹿島神社にある要石と、千葉県香取神社にある要石である。

「ここ杉沢市にも、要石があったんだな」

晴明はファイルをめくりながら言った。

「大ナマズはもう、住んでませんけどね」

大吾は言った。

もう、という言い方だと、かつては住んでいたということになるが、晴明はそのことについては特に触れなかった。