陰陽(教)師

晴明はファイルを見ながら言った。

「要は、重量挙げの選手なんだよ」

「重量挙げじゃない。パワーリフティングだ」

鈴子の言葉を、晴明は訂正した。

「一緒でしょ?」

「全然違う」

大吾がずい、と鈴子の前に立つ。

鈴子に吹き付ける風が、弱まった。

「重量挙げはウェイトリフティングと言って、パワーリフティングとは別の競技だ」

晴明が言った。

実際、その通りである。

どちらもバーベルを持ち上げ、その重さを競いあう競技であることに違いはない。

だが、バーベルを頭上に差し上げるウェイトリフティングに対して、パワーリフティングはスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの3種目の総計重量を競い合う。

「一番の違いは、ウェイトリフティングはオリンピック種目だが、パワーリフティングはそうじゃないって事だ」

「よく知ってるね先生」

「要のプロフィールを見てから調べたんだ」

晴明は大吾に視線を戻した。