・それは死んだはずの老婆であった。

・老婆は己の姿を見た者を襲い、喰い殺す。

・もう何人もの人間がこの家で行方不明になっている…etc

根も葉もないものからまことしやかにささやかれているものまで、その噂は多岐に渡っていた。

しかしヒロシは、それらの噂をどれも信じていなかった。

マスコミに売り込むのはついでで、それらしいものが撮れて、仲間内で騒ぐネタができればいいぐらいの気持ちであった。

「さ、行こうぜ」

ヒロシはナナの手をひいた。

「でも…」

ナナは足を進めるのをためらった。

「何オマエ、オバケなんて信じてるの?」

ヒロシは小馬鹿にした様子で、ナナにカメラを向けた。

「そうじゃないけど…」

ナナはカメラを遮りながら、家を見上げた。

風は轟々と鳴り、家を叩き続ける。

そのたびに家は音をたてて揺れる。

不気味なこと、このうえない。

「空き家だからって、勝手に入ったら、フホウシンニュウってやつにならない?」