陰陽(教)師

「お前ら河童が得意な、相撲で勝負だ」

「相撲か」

川太郎の嘴(くちばし)が笑いの形に歪んだ。

河童が相撲を得意にしている事は、数々の文献に記されている。

文化6年(1809)に刊行された【寓意草】には豊前国(今の福岡・大分県あたり)に住む河童が人に相撲を挑む話が収録されている。

また肥前平戸藩主・松浦静山の随筆集【甲子夜話】にも、力比べを挑んでくる河童の話が収められている。

昔の人々にとって、河童が相撲好きだという事は常識であった。

「オレと貴様が相撲で勝負するのか?」

川太郎も例に漏れず、相撲好きらしい。

今にも四股(しこ)を踏み出しそうな勢いだ。

「いいや」

晴明は首を振った。

「正確に言うと、相撲をとるのは俺じゃない」

晴明はそう言って懐に手を入れた。

そこから取り出したのは人形(ひとがた)の紙。

紙相撲の時に使用する、左右対称の型紙だ。