陰陽(教)師

「先生、お孫さんは棒術の心得があるんですか」

晴明が善吉に訊いた。

「最初は神道夢想流杖術を習っておった」

神道夢想流杖術は警視庁で採用されている武術である。

「その後、揚心流の心得を持つ方に教えを受けたそうじゃ」

「揚心流というと、揚心流薙刀(なぎなた)術の事ですか」

広島に本部を置く、薙刀の名門である。

「はじめは親の影響だったのじゃが、自身が先祖返りと知ってからは、さらに武芸に打ち込むようになった」

「現実逃避のためだったんですかね」

「ずばり訊くのう、先生は」

「生徒の事ですから」

晴明の言葉に、善吉はうなずいた。

「先生はご存じかと思うが、あの子の両親は、めったに家におらん」

明菜の両親は共に武道家である。

全国はおろか、世界中に弟子がおり、その指導で世界を飛び回っている。

「ワシも住んでおるのは国外じゃ。あの子の側にはおらん」

善吉は川太郎とにらみ合う明菜の横顔を見た。