陰陽(教)師

「どうしたんだよ、みんな」

嵩史の位置からは箱の中身は見えない。

晴明は善吉から箱を受け取ると、中身を嵩史に見せた。

嵩史の目には一瞬、それが黒く煤けた木の枝に見えた。

しかしよく見れば鋭い爪を持った5本の指がありその指の間には膜、いや水掻きがあった。

「北野天満宮にある河童の手のミイラに似てますね」

晴明がそう言うと

「さすが陰陽師。物をよく知っとるの」

善吉は感心した様子でうなずいた。

福岡県久留米市の北野天満宮には、河童の手のミイラが所蔵されている。

手首から爪先までは10センチほどで、親指のない4本の細長い指には尖った爪が生え、水掻きも見える。

言い伝えによると901年、菅原道真は藤原時平の謀略により、太宰府に左遷された。

その際、大分県の筑後川で暗殺者に襲われた。

その時、道真の救援に駆けつけたのが、三千坊と名乗る河童であった。

三千坊は手を切り落とされたが、彼のお陰で道真は一命をとりとめた。