陰陽(教)師

嵩史の言葉を受けて、善吉が再び口を開いた。

「だから左腕を縮めれば右腕が伸び、右腕を縮めれば左腕が伸びる」

「明菜ちゃんのおじいちゃんって、妖怪に詳しいんだね」

飛び跳ねるのをやめた鈴子が、感心した様子で言った。

「河童を解剖したことあるんじゃねぇの」

嵩史の言葉に、善吉は一瞬目を丸くしたが、やがて「そりゃ傑作じゃ」と大笑いした。

「お前ら、五島のお祖父さんがどういう人か知らないのか?」

晴明が、半ば呆れた顔で言った。

「大英博物館東洋調査部部長の五島善吉先生と言えば、日本民俗学の第一人者だぞ」

民俗学とは民間伝承を資料として、人類の文化を解明しようとする学問である。

各地に伝わる妖怪譚の収集と読解は、基本と言っていい。

「つまり妖怪に関しては専門家だ」

「河童を解剖したことはないがの」

善吉は片目をつむった。

「河童の腕が伸びるということは、江戸時代に描かれた河童の絵に書いてあるんじゃよ」