陰陽(教)師

「こら木下!人のアゴを撫でるな!」

やおら嵩史が抗議の声をあげた。

「オレは猫じゃねぇ!」

「なに言ってるの、猫じゃん☆」

鈴子は、嬉々として言った。

嵩史は現在、大吾に首根っこをつかまれ宙ぶらりんな状態になっている。

その姿は、完全に猫であった。

茶色がかった柔らかな毛並みを持ち、大きさも普通の猫ぐらい。

猫又であることを示しているのは、二又に別れた尾だけだった。

「尻子玉を抜かれると、人の姿をとれなくなるのか」

晴明は猫の姿になった嵩史を興味深げに眺めた。

「それだけじゃねぇ。全身の力が入らねぇんだ」

猫、いや嵩史は言った。

確かに嵩史の四肢はダラリと下がったまま。

声を出せるのが、救いと言えた。

「妖怪の尻子玉には妖力の一部が詰まっとるのかもしれんのう」

善吉が晴明と嵩史の間に入ってきた。

「なぁ、尻子玉ってなんだ?」

嵩史が訊いた。

「尻子玉は尻の近くにある臓器の一部と言われておる」