陰陽(教)師

善吉が叫んだ。

「その通り」

河童が、目を血走らせたまま答えた。

明菜の目には、河童の嘴が歪んだように見えた。

「この猫又の尻子玉を返して欲しければ、俺の左手を渡せ!」

河童は、善吉にそう迫った。

「俺の左手って…」

明菜は嵩史を介抱しながら善吉を見た。

この河童と祖父の間に一体何があったというのか?

「やはりお前は川太郎か…」

善吉は奥歯を噛み締めながら言った。

「そうだ。川太郎が500年前の約束を果たしてもらいに来たぞ」

川太郎と名乗った河童は肩で息をし始めた。

嵩史との戦いのダメージが、尾をひいているらしい。

「お前の左手はここにはない」

善吉は首を振った。

「それに500年前の約束なら、まだ時間があるだろう」

善吉は頭上の太陽を指した。

「そうか。約束を守る意志はあるわけだな」

「そうだ。だから尻子玉を返せ」

「いいや。こいつは預かっておく」

河童は右手を掲げた。