そばに寄ってしゃがめばその頬には涙の跡があって俺はどうしようもなく罪悪感で胸が締め付けられた。

その頬に謝罪の意味を込めて唇をよせる。唇が冷たかったのか小さく呻いてもぞもぞとこのみが動いた。

そして無意識なのか布団から手を出して隣を探る仕草をした。
いつも二人で寝るときに俺がいる、このみの右側。

今度は愛しさで胸が締め付けられた俺は着ていたダウンを脱いで布団から出ているこのみの手をとりながらその右側に滑り込んだ。

すっと腕をこのみの頭に置けば自然とそこに頭を乗せるこのみが愛しかった。ほかほか暖かいこのみを抱けば当たり前のように俺の背にまわされる腕がどうしようもないくらい嬉しかった。

このみから無意識に贈られたプレゼントに自然と自分の頬も緩む。

「あ、忘れてた」

手探りでダウンのポケットから長細い箱をだしこのみの枕元に置いた。

なけなしのボーナスをつぎ込んだピンクゴールドの、ダイヤのネックレス。きっとこのみの白くて細い首に映えるだろう。

「メリークリスマスこのみ、愛してる」


小さく呟いた言葉に反応するみたいにこのみが俺の胸に頬をよせて笑った気がした。なんて俺の都合のいい思い込みだろうか。
先輩から休みをもぎとった明日はこのみを全力で甘やかそう。きっと朝一番に俺がいることに驚いて、それから枕元を見て喜ぶこのみを想像しながら俺は目を閉じた。


……一瞬視界の端に入ったゴミ箱からのぞく【先輩滅びろ】なんて物騒な文字は見なかった事にして。


END