て、事で。
「ヤスちゃん、強いの一杯!いや軽いのにしとこうかな」
「どっち?ていうか、昨日あれだけ飲んで迎え酒?有り得ないわねー」
カウンターを挟んでダミ声に裏声を混ぜながらケタケタと笑うのはオーナーのヤスちゃん。自他共に認める性別男の女装家だ。
相変わらず、綺麗に化粧しているヤスちゃんを眺めて、ガンとテーブルを叩く。
飲まずにやってられるか!…なんて、デカイ口叩いたけどアルコールフリーでお願いします!
脳にも体にも外傷はないんだから、心を静めるだけの一杯が欲しい。
「あたしってばね、記憶障害の真っ最中だよ?」
「はあ?」
「結婚してたんだって?しかも別れたって?なにそれ?信じらんない」
「…頭、大丈夫?まだ一滴も飲んでないわよね?」
「大丈夫でないってば」
ヤケになりながら、あたしはツラツラとこの衝撃的な出来事をヤスちゃんにぶちまけた。

