あたしは今程、自分を楽観的だと感じた日は無いかもしれない。
一時的な記憶喪失、結婚していて相手の顔さえ思い出せないけれど、既にバツイチ。衝撃的な事実をまだ受け止めきれていないのに、初めて出会ったこの天使みたいに綺麗な男の人に一目惚れをしている。
しかも、その彼、スグルさんはあたしと目が合う度、優しく微笑んでくれて、その度心臓が飛び跳ねるものだから、会話なんて上の空になってしまう。これじゃあかんがな、と、ヤスちゃんの出してくれた絶品サラダを口に入れてスパイスの効いた自家製ドレッシングにくぅ、と目を細めた。
「やっぱり、美味しそうに食べるんだね」
「そう、ですか?美味しいから、かな」
「うん。ここ、ついてる」
「え?」
スグルさんの長い指先が、あたしの唇の端に触れる。
「可愛い」
クス、と笑った彼の笑顔の方が何億倍も格上に綺麗で、あたしは目を丸くして彼に撃沈した。

