私たちは体勢を戻し、葵衣のお母さんを見た。

隣の葵衣は唇を噛みながら、嫌そうにお母さんを見てた。



「何も答えられないのは、我が子をちゃんと見ていなかった。教育を怠ってたんでしょうか」



基槻のお母さんは強い。

母親という存在を知らなくても、立派な人だとわかる。

私は基槻を見た。

羨ましいとかじゃなく、素敵な人に育てられたからこそ、基槻が強くて優しい人になったとわかったんだ。



「来島さんのお兄さんからは、何かありませんか?」



話を変えるように、教頭がお兄ちゃんに話を振った。

お兄ちゃんは「そうですね…」と、いつもと違う、低い声で話を始めた。