俺は遊を抱き締めた。

遊はきっと、兄貴に遠慮してると思う。

優しい心を持ってるヤツだから。



「遊?」



「お兄ちゃんに、謝らないと…」



どうしてこんなにも人に優しいのだろうか。

兄貴がたった1人の家族だから?

俺には甘える事の出来る親や姉貴も居たから、遊の我が儘や願いを受け止めるのに。

でもそれは、遊と俺の育った環境の違いなんだろうか。

俺がもっと、遊の深い所まで、入らないといけないのか?

俺は遊の頭を撫で、涙を拭いて、微笑んだ。



「遊は、謝らないで良いんだ」



もし、謝りたいと言うなら、そこで、俺も頭を下げる。

守れなかった事を。

だから、泣くなよ―――…。



―基槻 SIDE END―