基槻が地面に座った。

私も隣に腰を下ろすと、基槻が、横目で私を見て来た。



「何?」



「眼鏡は?」



「家だけど…」



私が“わけがわからない”と言うような表情をすると、基槻がカッターシャツの胸ポケットから、眼鏡を取り出した。

カーキ色の縁の眼鏡。

私がしてる厚くて縁なしの眼鏡とは違う、オシャレな眼鏡だ。



「これ、俺の眼鏡。掛けて」



「…うん?」



私は「度が合うかな?」と言いながら、スカートのヒダに取り出したコンタクトを乗せ、眼鏡を掛けた。



「微妙にキツいけど、大丈夫かも(笑)」



私は眼鏡のフレームを右手で持ちながら、基槻を見た。

基槻はそんな私の頭に手を乗せた。

基槻の眼鏡を掛けれて、基槻が私に触れてるだけで、幸せを感じる。