基槻に体の向きを変えられた。

変わらず抱き締められて居るけど、基槻は涙を拭いてくれて、頬にキスをしてくれた。

ピクッと反応した私の唇に、基槻が人差し指を添えた。



「ここは、遊が慣れてからだな」



「ごめんなさい…」



私て何でこんなに情けない人間なんだろう。

それに、基槻は優し過ぎる。



「謝る事ないから。但し…」



「“但し”?」



「誰にもファーストキスはやらないで?俺がするから」



「うん」



そんなの、当たり前だよ。

基槻以外、絶対に嫌だよ。

初恋、初キス、私の初めてを全て基槻に捧げる。

だから、どこにも行かないで。

基槻以外、いらないと思ってだけど、私って、かなり贅沢で我が儘なのかも知れないね――。