優しい風〜隠れ美少女の初恋〜【完】

階段を歩く私たちに会話はなし。

私と彼の距離は1m。



「深川君、来島さん、さようなら。気を付けて帰ってね?」



「「はい」」



彼の担任である北村ーキタムラー先生の方が、私より近い位置に立って居た。

肩にも触れていた。

そんな事、私には出来ない…。



「―――う。ちょっ、遊?」



「え…っ」



北村先生が去って行った方向を見つめて居ると、深川君に呼ばれた。

肩を掴まれて居て、その事に気付いた私は、途端に顔が赤くなる。



「遊、帰ろ?」



「…は、はいっ」



夕陽で赤みを帯びた頬はバレて居ないだろう。

夕陽に感謝しないと。

私はぎこちないながら彼の手をそっと握った。