「深川君、来島さんと付き合ってるのよね?」



「何で…」



「来島さんが寝言で“基槻”って言ってたのよ。モトキって生徒は、貴方しか居ないから、私の勘は当たってると思うけど(笑)」



「…ん、正解」



寝言で名前を呼ばれたとか、嬉しい限り。

名前なんて呼ばれてないし。

なのに、はっきりと「付き合ってる」と頷けない自分が悔しかった。

遊に惚れてると、自覚した。



「深川君。来島さん、泣いてたわ…」



「泣いてた…?」



「来島さんもまだ、甘えたい年頃なのよ」



…甘えたい年頃…。

俺は遊が寝ていたであろう、布団が捲られたままのベッドを見た。

“お兄ちゃんは日によって忙しい”…―
あいつ、一人ぼっちの自覚が多くて、甘えたくても、出来なかったんだ。