私は左手の指輪を弄ぶ。

これは結婚指輪ではない。

“予約”の指輪らしい。

専門学校に通ってた時、基槻は和人さんの勤める美容室でバイトしてて、初めての給料で買ってくれたんだ。



「早く一人前になるからな?」



ちゅ…っと、リップノイズを起てながらキスして来た基槻。

私は「待ってる…っ」と照れながら返事をし、部屋を出て1階へ。

まだ7時なのに、お母さんは既に朝食を作り終えていた。



「おはよーう」



私は髪の毛をヘアゴムで結い、キッチンに入った。



「おはよう、遊。また基槻、起きなかったの?」



お母さんとはこの3年で、本当の親子みたいに関係が縮まった。