優しい風〜隠れ美少女の初恋〜【完】

―基槻 SIDE―



慌ただしい病院。

外で鳴りっぱなしの救急車のサイレン。

15分前、1人の老人を助ける為に、身体を張った風君が、オートバイに跳ねられた。



「「基槻――ッ!!」」



俺の電話で駆け付けた両親たち。



「ママ…っ!」



陽は泣きながら、姉貴に飛び付いた。

遊は処置室のドアに触れたまま、無表情で佇んでる。

俺が遊の肩に手を乗せても、瞳が動く事はない。

きっと、何も映してないからだ。



「風…」



父親は頭を抱えながら、長椅子に座る。



「死なないよね…?」



姉貴は泣きそうな声で、穂波さんに訊いてる。