「恋愛の仕方なんて忘れちゃったよ、あたし。」


乃愛の呟きが、今は少しだけ物悲しくも感じてしまう。


あたしは息を吐いた。



「結香さんも同じこと言ってたな。」


「あぁ、先週会ったんでしょ?
元気にしてた?」


「うん、バリバリって感じ。」


結香さんは今も夜の世界に身を置いている。


キャバから高級クラブに移ったらしいけど、「あたしはこんなとこでしか生きられないから。」と、いつもと変わらぬ笑顔だった。


道明さんのことなんて忘れたのだと口では言っていたけれど、でもきっとまだ、消化できない想いを人知れず抱えているのだと思う。



「まぁ、玉の輿狙うとか胸張ってたけどね、あの人。」


「それ、何回も聞いてるよね。」


ふたりで笑ってしまう。


ちなみにシロも元気で、今じゃすっかり大人の猫と言った感じだ。


変わったものと、変わらないもの。



「てか、お金持ちといえば、リサのお母さんじゃない?」


「さぁね、あたしよく知らないし。」


うちのお母さんはあれから、お得意の英語力と厳しさを生かし、塾を創めて密かに儲けているらしい。


お父さんの病気も完治したし、家族それぞれが自立して、上手くやっていると思う。


あの頃はこんな関係なんて、夢にも見られなかったけれど。



「きっとね、タカが守ってくれたから、今のあたしがあるんだと思うの。」