その日あたしは、幼いふたりで写る写真を胸に抱え、春樹の匂いの残るベッドで意識を失うように眠りに落ちた。


それからどれくらいが経ったのか、耳元で鳴るけたたましい電子音によって目が覚めた。


ディスプレイには、“タカ”という文字が点滅している。



『出ねぇかと思ったじゃん。』


遅れて通話ボタンを押すと、彼は笑っていた。


時刻は深夜2時を過ぎた頃だ。



『なぁ、今どこにいる?』


問われ、一旦自宅に戻ったことを告げると、



『あんま夜にふらふらすんなっつーの。』


「…ごめん。」


良いけどさ、とタカは言う。



『俺またさっき冬柴さんに呼ばれて、これから戻らなきゃならなくなったんだけど、それ終わったら帰れるはずだから。』


何をやっているのか、なんてことは聞けなかった。


けれど、タカがいつも通りだから、きっと大丈夫なのだと思う。



「気をつけてね。」


なんて言葉しか返せずにいると、彼はまた小さく笑ってから、



『早くお前の顔見てぇよ。』


呟くようにそう漏らした。



『いっつも一緒なのにさ、何か今、すげぇ隣にいてほしくて。』


「………」


『別にどうしたってわけでもねぇけど、俺、変だよな。』