「…春樹っ…」


そうだよね、いつだってあたし達は、肩を寄せ合って幼い頃を過ごしていたんだ。


何かある度に親に叱咤されながらも、大丈夫だからと必死で互いを励まし合っていた。


なのに5年前、春樹を信じてあげられなかったのは、あたし。


周囲からの好奇の目や、噂話に耐え兼ね、あの子を疎ましく思っていた。


でも、春樹はあの頃でさえも、こんな写真を捨てずに持っていてくれたのだ。


大切な弟。


いや、そんな陳腐な表現では足りないくらい、春樹のことが愛しかった。


ぼたぼたとアルバムに落ちる涙。


さらにクローゼットを探ると、中からは、昔の思い出の品が詰まった段ボール箱が出てきた。


そこには子供の字で、“たからばこ”と書かれている。



「…あっ、これ…」


ふたりで家出した時に頼りにした、電車の路線図案内。


一緒に観に行った戦隊ヒーローものの映画の半券や、夏祭りで買った、今ではガラクタのようなおもちゃまで。


どうして捨てなかったのだろう。


あの子は5年間この部屋で過ごしながら、どんな思いで昔のものに囲まれていたのだろう。


ごめんね、春樹。


もっと早く、あたしは大切なことに気付くべきだったのに。