被害者というのは、春樹のこと?


恐る恐る頷くあたしに、



「轢き逃げのようなんですけどね。」


と、50代くらいのしゃがれた声の男が言う。



「巡回中の警察官が発見しまして。」


「救急車を呼んだ時には、一時心肺停止状態になっていましたが、今は何とか持ち堪えたようです。」


「まぁ、うちの鑑識が現場採取してるので、何か手掛かりは見つかると思いますが。」


この人たちは、一体何を言っているのだろう。


そんな事務的に話されたって、思考が及ぶはずもない。


けれど胸ポケットから出された写真を見せられ、ぞっとした。


春樹のスティードはぐしゃぐしゃになっていて、アスファルトに大量にこびり付いた血のりが、事故の壮絶さを物語っている。



「轢き逃げって何よ、犯人は?!」


と、声を荒げた瞬間、はっとした。


まさか、堀内組の人間が、春樹の口を封じるために?


だって警察の人から連絡が来るより先に、タカがこのことを知っていただなんて、おかしな話だ。


あたしはふらふらと足を引いた。



「おっと、大丈夫ですか?」


タカは春樹を逃がしたと見せかけて、あたしを騙した?


そんなはずはないと思いながらも、勘ぐってしまう。


いや、それよりも、犯人を捕まえてと願うことはつまり、堀内組の拳銃取り引きにまで話が及ぶことになる。


そしたらどうなるの?