「小雪ちゃん、最期までありがとう。
きっと、拓海も喜んでいるよ」
あたしは、何もしてない。
ずっと、支えてくれたのは拓海だから。
まだ、何も返してないのに。
「これ。あの子がいつも身に付けていたお守り。
小雪ちゃん、こんなもので悪いけど、もらってくれるかい」
おば様から手渡されたのは、小さな布で作られたお守り袋。
昔、あたしが拓海にあげたもの。
白い布地にイニシャルを縫って、誕生石である小さなルビーを一つ入れただけの、冴えないお守り。
ずっと、持っていてくれたんだ。
それだけで嬉しかった。
「小雪ちゃん、あんたはまだ若いんだから。
早く新しい恋をするんだよ」
出来ないよ。
拓海独りぼっちにして、新しい恋なんて。
首を縦に振ることも、横に振ることも出来ず、唯、瞳を見開くことしか出来なかった。
「おば様、ありがとう、ございました」
やっとの事で、お礼の言葉を述べることが出来ただけ。