『おい、生きてるか』

「なんとなく」

『いつまでも悄気てんなよ。
 気休めも大事だ。
 今から付き合え』

「えっ!?」

ツー、ツー、ツー……

勝手に架かってきた電話が、勝手に切られちゃった。

──英士くん、らしいね

彼は、拓海と幼馴染みらしく、よく三人で食事や遊びに行ってたから、安心できる一人でもある。

 彼の誘いに、久しぶりに外の空気に触れた。

街の彼方此方ウインドウから溢れるように飛び込んでくる茶色いカラーに、ついつい目が移る。

「もうすぐ、バレンタインか」

今のあたしには、無縁なイベント。

「今年は1枚は確定だな」

「へぇ、英士くんにチョコくれる物好きさんもいるんだね」

「ヒッデーな」

「しょうがない。
 可哀想だから、あげるよ」

「義理なら受け取らねぇよ」

「じゃ、あげない」

「いや、今のなし!
 頼む義理でいいから見捨てるな」

──ぷっ

あたし達は、互いに顔を見合わせては一瞬の後、吹き出していた。