「あっ、あの、私、みてたんですけど…」

「ほら!!ほら!!目撃者いるじゃない!!」

私の言葉を遮って、女子高生は勝ち誇ったようにそう叫んだ。


「ちょっと、君までなんてこと言うんだ!!」

言葉が足りてない事に気づいた私は慌てて訂正した。

「あっ、違います!!私が見てたのは、この人が、この子に触ったりしてない事です!!」


私がそう言うと、女子高生は火が着いた様に更に怒り出した。



「アンタ!! 頭おかしいんじゃない!? なんで痴漢の味方してんのよ!! アンタも痴漢の仲間!?」


「違いますけど、貴女どうやって触られたって言いましたか?」


「だから、お尻触ったのよ」


「どっちの手で、どうやって触られましたか?」


「アンタほんといい加減にしてよね!?」


言い掛かりつけて、いい加減な事言ってるのは女子高生の方なのは、私は知っているから。


「一人の人間を犯罪者にしようって言うんだから、しっかり証言しなさいよ」


なんて、強気に出られた。


「なにそれ、アタシが悪い訳!?こいつがアタシのお尻掴んだのよ!!」



怒り心頭の女子高生から、聞きたかった言葉が聞けた。



「私、見てましたけど、彼は左手でつり革を掴んでいて、右手にカバンを下げて居たんですよ?それでどうやってお尻を『掴める』んですか?」


私の言った言葉に一瞬詰まる女子高生。


「そんな事知らないわよ!!」


「じゃあ、どうしてこの人に触られたってわかるんですか?」

回りの目は、あからさまに女子高生を呆れた目で見ていた。


「痴漢は確かに犯罪だけど、冤罪も起こりやすいんです。


彼女に触った人が、この人ではない事は証明できました。

でも、本当に彼女のお尻を掴んで痴漢犯罪を犯した人は、卑劣で恥ずかしい事をした、と悔いて下さい」


いつもの私なら、こんな事を言ったりしないのに。


テンションが上がっていたのか、女子高生に、


「私の証言から、彼がやってない事は理解できた?」

と、聞いていた。