俺は先生に言われて子猫に必要な物を全て揃えた。
立てるようになるまで回復するのを待って、子猫をシャワーで洗う。
その時ようやく、黒猫ではなく白猫だったことを知った。
子猫は『ニャー』と、か細い声で鳴く。
俺はその度に顎(あご)の下を擦った。
どのぐらいあの場所にいたんだろう。
こんなになるまで、どんな気持ちでいたんだろう。
どれだけ不安だったんだろう。
捨てられてからずいぶん時間が経っていたらしい。
子猫を拾った時には瞼(まぶた)が癒着していて。
子猫の右目には何も映らないと先生が話してくれた。
「捨てられるのって、つらくない?」
お前は飼い主に捨てられたんだろ?
俺は、自分の親に捨てられたんだよ。
どんなに小さくたって、生きているってことには変わりがないのに。
一つの命なのに……。
何気なくそう聞くと、子猫はニャーとまたか細い声を上げた。



