キスフレンド【完】


夏休みが中盤に差し掛かったある日。


俺は一匹の子猫を拾った。


見るからに弱々しかった猫はひどく汚れていて、まるでボロ雑巾のようで。


道端の小さな段ボールの中に入れられていた子猫を、俺はすぐに動物病院に連れていった。


「あと、一カ月……持つかどうか。衰弱が激しいですし……」


獣医の表情は暗く、子猫の命が絶望的だということは分かった。



「この猫は、捨て猫ですか?もしそうなら……――」


「今日から俺が飼うんで大丈夫です。もう捨て猫じゃありません」


この子猫は一度捨てられた。



もし俺が捨てたら、二度捨てられたことになる。


捨てられたものの気持ちは、きっと捨てられたものにしか分からない。