今はもう、昔のように悲しいからって涙を流すことはない。 声が枯れるまで何度も母さんの名前を呼ぶことも……。 希望と絶望の狭間を行ったり来たりすることもない。 母さんにはもう、期待しない。 そう心に決めたんだ……――。 どのくらい、そこにいたんだろう。 俺は姫に見惚れていた。声も出さずに涙を流す姫に。 自分以外の人間に関心を持ったのは、姫が初めてだった。