「姫、ありがとう」 あたしの気持ちが届いたのか、紫苑はあたしの背中に腕を回した。 ギュッと紫苑の胸に抱きしめられると、紫苑の甘い香水の匂いがする。 紫苑の匂い……なんか落ち着くな……。 薄いYシャツ越しに、紫苑の熱を感じて。 トクントクンっと一定のリズムを刻む心臓の音。 紫苑の腕の中は、これ以上ないってほど温かい。 だけど、この腕はあたしだけのものじゃない。 紫苑はみんなのもの。 決して、その心は掴めないから。