「辛く……ないの?」 思わずそう聞くと、紫苑は「もう慣れた」と笑った。 だけど、その笑みはいつものように柔らかくなんてない。 全てを諦めてしまったような瞳。 怒り、悲しみ、憎しみ、憤り。 紫苑は、親に捨てられたという事実を必死で受け入れようとしている。 そんな気がした。 「……ねぇ、紫苑」 「ん?」 だからあたしは、紫苑の手をギュッと掴んだ。 大丈夫。 大丈夫だよ。 紫苑は……一人なんかじゃない。 「キスしよ?」 紫苑は一度自分の手に視線を落とした後、あたしの目を真っ直ぐ見つめた。