キスフレンド【完】


紫苑の家は、学校から歩いてすぐの場所にあった。


茶色を基調とした洋風な造りのアパート。


男の子の家に遊びに来るのは今日が初めてで。


お母さん……家にいるのかな……。


「おじゃまします……――」


緊張しながら中に入ったあたしは、思わず息を飲んだ。


部屋の中があまりにも閑散としていたから。


生活感が全くといっていいほど感じられない部屋。


置いてある物も異常なほど少ない。


「驚いた?」


紫苑の部屋に通されたあたしは、ひんやりとしたフローリングの床にぺたりと腰を下ろした。