キスフレンド【完】


それなのに、今日は違った。


「うち、こない?」


紫苑は突然、道の真ん中でピタリと立ち止まると唐突にそう言った。


それはまるで、今思い付いたみたいに。


「紫苑の家?」


「そう」


「……行ってもいいの?」


「いいよ。姫なら」


「じゃあ……行こうかな……」


姫なら……か。


紫苑はあたしの気持ちなんておかまいなしだ。


あたしは紫苑の言葉に一喜一憂してしまうのに。


紫苑は柔らかい笑みを浮かべて満足そうに歩きだした。