紫苑はそのまま、一度も振り返ることなく屋上から出ていった。
『また、会えるといいね』
そう言って微笑んだ紫苑。
『また、会おう』のほうがずっといい。
そのほうが約束みたいだし。
「ハァ……」
あたしだけが勝手に紫苑にどっぷりとハマっている。
一方的な片想い。
見ているだけなら、きっとこんな気持ちにならなかっただろう。
目が合って、言葉を交わして、頬を撫でられて、キスをした。
もう止められない。
だけど、止めないといけない。
紫苑に恋をしても、無駄。
頭ではちゃんと分かっているから。
目を閉じると、眩しい太陽に顔がジリジリと痛んだ。