キスフレンド【完】

「うちはさ、両親でペンションの経営をしてるんだ。小さいペンションなんだけど、結構人気があってさ」


「へぇ……」


「夫婦で同じ仕事っていうのも大変だよね~。ずっと顔を合わせてるわけだし。でも、うちの両親って昔から仲良いから全然平気みたいでさ」


家族の仲の良さを話す菊池に悪気はないのだろう。


ただ、この空気を変えようと適当な話をしているだけ。


それなのに何故だろう。


どうしてこんなにもイライラするんだ……――。



「それで、紫苑君の両親は?」


「うちは離婚してる」


「へぇ~。大変だね。どっちに引き取られたの?」


「母親」


「兄弟は?」


「……いない」


「そっかぁ。お母さんと一緒に住まなくて大丈夫なの?」


大丈夫も何も、俺は母親に捨てられたんだ。


俺には実家もないし、両親が今何をしてるのかも分からない。


高校時代から今もお世話になっている親戚のおじさんおばさんも、母さんがどこにいるのか知らないと言っていた。