本当は、ずいぶん前から姫への自分の気持ちに気付いていた。
でも、どうしても『好き』と言えなかったのは俺の複雑な家庭環境のせいだ。
借金取りに追われているような俺が、どうすれば姫を幸せにしてやれるのか分からなくて。
自分の生活で精一杯の俺が、姫と付き合っていける自信もなかった。
『俺、姫が好きだよ』
ずいぶん前に屋上で俺は姫に自分の気持ちを打ち明けた。
でもその後、逃げるように屋上を後にした。
俺が姫を『好き』だという権利は何もない。
好きだからといって、俺は姫に何をしてやれる?
ポロリと零れ落ちた『好き』という言葉。
でも、俺はグッと自分の感情を押し殺すしかなかった。